#導入事例・セミナー報告 #業務別AI活用

2026.09.08

【事例】E社(学習塾)|報告書作成を2〜3時間→1時間以内に

学習塾E社の学習報告書作成をAIとApps Scriptで効率化した事例のイメージ図

執筆灰藤 健吾(CES UP株式会社 取締役CAIO/生成AIアドバイザー/生成AIコミュニティ「SHIFT AI」認定講師)

※お客様のご意向により社名は仮名で掲載しています

生徒が増えるほど、紙の記録を確認して報告書にまとめる作業は重くなります。本記事では、個別指導型の学習塾E社が、社内のApps Script(Googleのサービスを自動化するプログラム)とAIを組み合わせて学習報告書の作成を効率化した支援実績を紹介します。CES UPは仕組みを丸ごと作るのではなく、内製チームの相談相手として精度と設計を後押ししました。AI研修・伴走支援を担当する灰藤が、進め方の判断基準まで解説します。

この事例の要点(結論)
  • 業種・規模:学習塾(中規模・個別指導型)
  • 課題:生徒の紙のタスク表・スケジュール表・実施記録を、アルバイトスタッフが毎週手作業で確認。生徒数の増加で限界に
  • CES UPの支援:Apps Scriptを扱えるご担当者の内製を、OCR精度・設計面の相談相手として伴走。模試PDFのテキスト化にNotebookLM(現:Gemini Notebook)を提案
  • 結果:ご担当者の計測では、学習報告書の作成時間が2〜3時間から1時間以内(約1/2〜1/3)に

ご支援前の課題

E社の課題は、紙で運用している学習記録の確認が、人手に依存したまま増え続けていたことです。生徒一人ひとりが紙のタスク表・スケジュール表・実施記録をつけ、それをアルバイトスタッフが毎週手作業でチェックしていました。

個別指導型の塾にとって、生徒ごとの記録は指導の質そのものです。確認を省けば保護者への学習報告書の中身が薄くなり、丁寧にやろうとすればスタッフの時間が足りなくなります。生徒数が増えるにつれて、この板挟みが限界に近づいていました。

加えて、模擬試験の結果はPDFで届くため、設問ごとの正誤や分野を報告書に反映するには、手作業でテキストに起こす必要がありました。紙とPDFという2種類の「読み取り作業」が、報告書作成の前工程に積み重なっていたのです。

業務 支援前の状態 困っていた点
生徒の学習記録の確認 紙のタスク表・実施記録をアルバイトが毎週目視でチェック 生徒数に比例して作業が増える
模試結果の整理 PDFの内容を手作業でテキスト化 転記の手間と転記ミスのリスク
学習報告書の作成 上記2つの結果を人が集約して作成 作成に時間がかかり、確認が後回しになりやすい

CES UPの切り口:全部作らず「後押し」に徹した理由

CES UPがE社で選んだのは、仕組みを代わりに作る支援ではなく、内製を後押しする支援です。ご担当者自身がApps Scriptを扱え、すでにOCR(画像や紙の文字をテキストに変換する技術)を使った仕組みづくりに着手していたためです。

CES UPの支援メソッドには「内製できる相手には後押しに徹する」という考え方があります。自社で作れる力がある会社に対して外部が全部を作ってしまうと、運用開始後に小さな修正が必要になるたびに外部に頼る構造が生まれます。E社の場合、担当者の手元に仕組みが残るほうが、生徒数の変化や帳票の変更にも早く対応できると判断しました。

作るのはE社、精度と設計はCES UPが後押しE社(内製チーム)とCES UP(相談相手)の比較作るのはE社、精度と設計はCES UPが後押しE社(内製チーム)Apps Scriptで仕組みを作る運用と修正を担う作成時間を計測するCES UP(相談相手)読み取り精度の担保設計の抜け漏れ確認NotebookLMなど手段の提案相談・後押し
図1 E社とCES UPの役割分担
CES UPの判断基準:どこまで作り、どこから任せるか
① 社内に書ける人がいるか(Apps Script・スプレッドシート関数など)
② その人が運用後も保守に時間を割けるか
③ 外部が関わるべきなのは「精度の担保」と「設計の抜け漏れ確認」か
E社は①②が満たされていたため、CES UPは③に集中しました。

この進め方は、研修で終わらせずに定着まで伴走するという、CES UPの全体方針とも一致しています。研修後の定着の考え方はAI研修を「やって終わり」にしない方法でも詳しく解説しています。

実施したこと(OCR精度の相談・NotebookLM・設問分類)

実施したのは、OCR運用の精度を担保するための相談、模試PDFのテキスト化の方法提案、設問分類の設計への並走の3点です。いずれも「作業そのもの」ではなく「作業が正しく回る設計」に関わる部分です。

ステップ1:OCR運用の精度をどう担保するかを一緒に決める

紙の記録を読み取る仕組みで最初に決めるべきなのは、読み取り結果が間違っていたときにどこで気づくかです。ご担当者とは、読み取り結果をそのまま報告書に流し込むのではなく、確認が必要な箇所を人が見られる状態にしておく運用を検討しました。

AIやOCRの精度は100%にはなりません。だからこそ「どこまで自動で任せ、どこで人が目を通すか」を先に決めておくと、運用開始後の手戻りが減ります。

ステップ2:模試PDFの2つの課題にNotebookLMを提案

模試PDFについては、2つの課題がありました。1つは手作業でのテキスト化に時間がかかること、もう1つはスキャンしたPDFをAIに直接読ませると読み取り精度が落ちることです。この2つに対して、CES UPはGoogleのNotebookLMを提案しました。

NotebookLMは、アップロードしたPDFなどの資料を「ソース」として読み込み、その内容に基づいて回答するAIツールです。公式ヘルプによると、回答にはソースからの引用が付き、引用を選ぶと元資料の該当箇所を確認できます(2026年9月時点)。模試の設問と回答を照合する際に、AIの出力と原本を行き来しながら確認できる点を重視しました。

ツール名の変更について(2026年9月時点)
GoogleはNotebookLMの名称を「Gemini Notebook」に変更すると2026年7月16日に発表しました。公式発表では、既存のノートブックや共有リンクは引き続き利用できるとされています。本記事ではご支援当時の名称で記載しています。出典:Google Workspace Updates、Gemini Notebook ヘルプ(チャットと引用)

ステップ3:設問分類の設計に並走する

模試の結果を報告書に活かすには、設問を分野や単元ごとに分類する必要があります。この分類の設計を、ご担当者と一緒に検討しました。分類のルールが曖昧なままAIに任せると、同じ設問でも回によって振り分け先が変わるおそれがあるためです。

分類の基準は人が決め、AIには決めた基準に沿った作業を任せる、という役割分担を意識しました。この考え方は、社内のApps Scriptで処理を組むときにも、そのまま設計のよりどころになります。

課題 CES UPの提案・関わり方 ねらい
OCRの読み取りミスへの不安 確認が必要な箇所を人が見られる運用を一緒に設計 誤りに気づける仕組みを先に作る
模試PDFの手作業テキスト化 NotebookLMでPDFをソースとして扱う方法を提案 転記の手間を減らす
スキャンPDFの読み取り精度 引用で原本と照合できる使い方を提案 AIの出力を元資料で確かめられるようにする
設問分類のぶれ 分類基準の設計に並走 判断は人、作業はAI・プログラムに分ける

Apps ScriptはGoogle Workspaceと連携する業務アプリを作るための開発環境で、ブラウザ上で書いてGoogleのサーバーで実行できます(出典:Google for Developers「Apps Script overview」、2026年9月時点)。スプレッドシートやドライブと組み合わせやすいため、E社のようにGoogleのサービスで記録を管理している現場とは相性の良い選択肢です。

2つの読み取り作業と確認の流れ紙のタスク表・実施記録はOCRでテキスト化し人が確認。模試PDFはNotebookLMで引用から原本と照合し、設問分類の基準は人が決めて学習報告書にまとめる。2つの「読み取り作業」と確認の流れ紙のタスク表・実施記録OCRでテキスト化確認が必要な箇所を人が見る模試のPDFNotebookLMで引用から原本照合設問分類の基準は人が決める学習報告書判断は人、作業はAI・プログラム紙・PDF読み取り人の確認・判断アウトプット
図2 紙の記録と模試PDF、それぞれの読み取りと確認の流れ

社内に作れる人はいるけれど、精度や設計に自信がない。そんな段階の相談も受け付けています。

初回無料相談(オンライン対応可)を申し込む →

AI研修・生成AI顧問・ツール開発の詳細は AIソリューション事業ページ へ

結果:報告書作成が2〜3時間から1時間以内に

ご担当者の計測では、学習報告書の作成時間が2〜3時間から1時間以内になりました。割合にすると、おおむね1/2〜1/3の時間で作れるようになった計算です。

ご担当者からの報告時点で、この仕組みは月数百件規模の報告書作成に使われていました。生徒数の増加に合わせて人手を増やすのではなく、仕組みで吸収できる形に近づいたといえます。

学習報告書の作成時間の変化ご担当者の計測で、学習報告書の作成時間が支援前の2〜3時間から支援後は1時間以内になった。おおむね1/2〜1/3。学習報告書の作成時間(ご担当者の計測)0時間1時間2時間3時間支援前2〜3時間支援後1時間以内おおむね1/2〜1/3※点線部分は2〜3時間の幅を表します数値はE社ご担当者の計測によるものです
図3 学習報告書の作成時間(支援前後の比較・ご担当者の計測)

なお、この数値はCES UPが計測したものではなく、ご担当者が運用のなかで計測された結果です。仕組みを作り、回し、測ったのはE社のチームであり、CES UPはその過程の相談相手でした。

担当コンサルタントのコメント

E社(学習塾)支援の全体像課題:紙の記録をアルバイトが毎週手作業でチェック生徒増で限界に・切り口:全部は作らず内製チームの相談相手として後押し・解決:OCR精度の相談模試PDFにNotebookLMを提案設問分類の設計・結果:報告書作成が2〜3時間から1時間以内に(ご担当者の計測)E社(学習塾)支援の全体像課題紙の記録をアルバイトが毎週手作業でチェック生徒増で限界に切り口全部は作らず内製チームの相談相手として後押し解決OCR精度の相談模試PDFにNotebookLMを提案設問分類の設計結果報告書作成が2〜3時間から1時間以内に(ご担当者の計測)
図4 E社の支援の全体像(課題→切り口→解決→結果)

E社の事例で改めて感じたのは、「自分たちで作れる会社」ほど、外部の役割を絞ったほうが成果が出やすいということです。すでに手を動かせる人がいる現場では、外部が全部を作るよりも、精度の落とし穴や設計の抜け漏れを早めに指摘するほうが役に立ちます。

もう1つは、AIの読み取りは「任せきり」にしない設計が前提になるということです。スキャンPDFのように精度が揺らぎやすい資料は、原本に戻って確かめられる手段を用意しておくと、現場は安心して使えます。NotebookLMを提案したのも、機能の多さではなく、この確かめやすさが理由でした。

学習塾に限らず、紙の記録を毎週チェックしている業務はどの業種にもあります。まずは「読み取る作業」と「判断する作業」を分けて書き出してみてください。AIやプログラムに任せられる範囲が見えてきます。

今後に向けて:同じ仕組みを広げるときのポイント

同じ仕組みを他の教室や他の帳票に広げるときは、読み取り精度の確認手順と分類ルールを文書にしておくことが重要です。担当者が1人で抱えている状態のままだと、その人が不在のときに仕組みが止まります。

  • 読み取り結果を人が確認するタイミングと担当を決めておく
  • 設問分類などの判断基準を、AIへの指示とは別に文書で残す
  • 帳票の様式が変わったときに、どこを直せばよいかをメモしておく
  • 作成時間などの効果を、導入前と同じ方法で定期的に測る

効果の測り方や、研修から定着までの全体像は中小企業の生成AI導入 完全ガイドにまとめています。自社でAIを使って効果を確かめてから提供する、というCES UPの考え方はマネーフォワード×Claudeを活用した自社事例もあわせてご覧ください。

同じ課題を持つ学習塾・教育事業者の方へ

紙の記録確認や報告書作成に追われている学習塾・教育事業者の方から、よくいただく質問をまとめました。

Q. 学習塾の業務でAIを活用しやすいのはどんな作業ですか?
A. 紙の記録やPDFの内容を読み取り、決まった形式の報告書や一覧にまとめる作業は効果が出やすい領域です。E社では生徒のタスク表・実施記録の確認と学習報告書の作成が対象でした。一方、読み取り精度の確認手順を決めずに始めると手戻りが増えるため、最初に精度の担保方法を設計することが大切です。
Q. 社内にApps Scriptを書ける人がいる場合も、外部の支援は必要ですか?
A. 必ずしも全部を外注する必要はありません。E社のように内製できるご担当者がいる場合、CES UPは設計や精度面の相談相手として後押しする形を取ります。自分たちで直せる仕組みが残るため、運用開始後の修正も社内で回しやすくなります。
Q. スキャンしたPDFをそのままAIに読ませても問題ありませんか?
A. スキャンPDFをAIに直接読ませると、読み取り精度が落ちる場面があります。E社では一度テキストとして扱える形にしてから使い、元資料の該当箇所と照合できる状態にする方針を取りました。点数や設問番号など誤りが許されない情報は、元資料で確認する手順を残すことをおすすめします。
Q. NotebookLMは今も使えますか?
A. GoogleはNotebookLMの名称を2026年7月16日に「Gemini Notebook」へ変更すると発表しています(2026年9月時点)。公式発表では、既存のノートブックや共有リンクは引き続き利用でき、ソースに基づいて引用付きで回答する使い方も公式ヘルプに記載されています。料金やプランごとの上限は変わる可能性があるため、利用前に公式ヘルプをご確認ください。

「自社の業務のどこからAIを入れるべきか」を一緒に整理します。初回相談は無料です。

初回無料相談(オンライン対応可)を申し込む →

AI研修・生成AI顧問・ツール開発の詳細は AIソリューション事業ページ へ

紙と手作業の確認業務、AIで軽くできる部分から始めませんか
✔ 業務をヒアリングし、AIに任せる範囲と人が見る範囲を整理
✔ 内製チームがある会社には、設計・精度面の相談相手として伴走
✔ 研修で終わらず、定着・ツール化まで支援
初回相談は無料・オンライン対応可能です。

▶ 初回無料相談に申し込む

CES UP株式会社|〒541-0048 大阪府大阪市中央区瓦町3丁目4番10号 日宝御堂ビル5F
この記事を書いた人
灰藤 健吾
CES UP株式会社 取締役CAIO/生成AIアドバイザー/生成AIコミュニティ「SHIFT AI」認定講師

CES UP株式会社 取締役CAIO。生成AIアドバイザー、生成AIコミュニティ「SHIFT AI」認定講師。中小企業・士業・福祉・教育など幅広い業種で、ヒアリング起点のAI研修と、研修後の定着・ツール化までの伴走支援を担当。「AIを使える」から「AIで自分たちの仕組みを作れる」状態をゴールに、現場の業務に合わせた設計を行っている。

プロフィールを見る →

CES UP株式会社は、大阪を拠点に中小企業の生成AI導入・AI研修・業務改善ツール開発を支援する会社です。

公開日:2026年9月8日/最終更新日:2026年9月8日



CONTACT US.

ご相談・ご依頼・ご質問など、
お気軽にお問い合わせください。
「ちょっと話を聞いてみたい」「何から始めればいいかわからない」といった初期段階でも大歓迎です。
お問い合わせ内容を確認のうえ、
担当者よりご連絡差し上げます。

トップ