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2026.09.17
【事例】社会福祉法人F|AI未活用49.5%を全職員調査で可視化
※お客様のご意向により社名は仮名で掲載しています
生成AIを法人全体に広げたいと考えたとき、最初にやるべきことは研修の手配でもツールの契約でもなく、今の利用状況を測ることです。本記事では、職員数百名規模で複数の施設を運営する社会福祉法人Fで、全職員アンケートにより生成AIの浸透度を可視化した事例を紹介します。アンケート結果をどう読み、何を先にやり、何を後回しにしたのか。伴走を担当する灰藤が、判断の理由まで解説します。
- 業種・規模:保育・福祉の社会福祉法人(職員数百名規模・複数施設)
- 課題:施設や職種ごとに生成AIの使われ方がばらばらで、何から手を付けるべきか判断しにくい
- CES UPの支援:全職員への生成AI浸透度アンケート、月次DX推進室定例への伴走、ツールの使い分け助言
- 結果:全職員アンケート(回答269件)で、AIをほとんど/まったく使っていない職員が49.5%というベースラインを可視化
ご支援前の課題:どこから手を付けるべきか見えない
社会福祉法人Fの出発点は、生成AIの活用を進めたいが、法人全体で見たときにどこから手を付けるべきかが見えにくいという状態でした。複数の施設があり、職種も保育・福祉の現場から事務まで幅広いため、AIへの関心や使い方は人によって大きく異なります。
こうした組織では、声の大きい部署の要望から順に対応したくなります。しかし、目の前の要望を1つずつ解決していく進め方では、法人全体として何が変わったのかを説明しにくくなります。導入後に「効果はあったのか」と問われたときに、比べる基準がないからです。
法人にはDX推進室があり、月次の定例で取り組みを検討する体制がありました。CES UPはこの定例に伴走する形で支援を始めています。
CES UPの切り口:場当たり的に解決せず「まず測る」
CES UPが社会福祉法人Fで最初に提案したのは、場当たり的に課題を解決するのではなく、まず全職員の現状を測ってから優先順位をつけることです。CES UPの支援メソッドでは、これを「まず測る」と呼んでいます。
測る目的は2つあります。1つは、どの層にどんな支援が必要かを判断すること。もう1つは、導入後の効果を同じ方法で比べるための基準(ベースライン)を持つことです。
| 進め方 | 起きやすいこと | 測ってから始めた場合 |
|---|---|---|
| 要望が出た部署から順に対応 | 使う人と使わない人の差が広がる | 法人全体のどこに支援が必要かが分かる |
| 研修を全員に一律で実施 | レベルが合わず定着しにくい | 利用状況に合わせて内容を変えられる |
| 効果を後から説明 | 比べる基準がなく説明しにくい | 導入前後を同じ方法で比較できる |
実施したこと:全職員アンケートと月次DX定例への伴走
実施したのは、全職員への生成AI浸透度アンケート、月次DX推進室定例への伴走、ツールの使い分けに関する助言の3つです。
1. 全職員への生成AI浸透度アンケート
法人の全職員を対象に、生成AIの利用状況を尋ねるアンケートを実施し、269件の回答を得ました。一部の部署や関心の高い職員だけでなく、法人全体の状況をつかむことが目的です。
2. 月次DX推進室定例への伴走
アンケートの結果をもとに、月次のDX推進室定例で優先順位や進め方を一緒に検討しています。外部が一方的に計画を決めるのではなく、法人の内部で意思決定が回るよう、定例の場に伴走する形を取りました。
3. ツールの使い分けの助言
職員が迷わず使い始められるよう、用途ごとに使うツールを整理してお伝えしました。画像の読み取りにはGemini、計算や文章作成にはCopilotという使い分けです。「何でも1つのAIで」ではなく、用途と道具を対応させておくと、現場での説明もしやすくなります。
| 用途 | 助言したツール | 公式情報で確認できること(2026年9月時点) |
|---|---|---|
| 画像の読み取り | Gemini | 画像やPDFなどのファイルをアップロードして分析できる。仕事用アカウントでは、組織の管理者がGeminiアプリの利用を有効にする必要がある(Gemini アプリ ヘルプ) |
| 計算・文章作成 | Copilot | 対象となるMicrosoft 365ライセンスにはCopilot Chatが含まれ、仕事用・学校用アカウントにはエンタープライズデータ保護が適用される。使える範囲は契約内容によって異なる(Microsoft Learn) |
「職員がどれくらいAIを使っているか分からない」という段階からのご相談も受け付けています。
AI研修・生成AI顧問・ツール開発の詳細は AIソリューション事業ページ へ
シフト自動化で「先にルールを揃える」と判断した理由
支援の中では、シフト作成の自動化も検討テーマに挙がりました。検討の結果、自動化を急がず、先に運営ルールの標準化を進める方針に切り替えています。拠点ごとに配置基準が異なり、1つの仕組みで全拠点に対応させる汎用化が難しかったためです。
ルールが拠点ごとに違う状態で自動化を進めると、拠点の数だけ例外処理を抱えた仕組みになります。作るのにも直すのにも手間がかかり、結局は現場が使わなくなるおそれがあります。
CES UPの支援メソッドには「失敗を設計に戻す」という考え方があります。汎用化できないと分かった時点で、無理に作り込むのではなく、前提となるルールづくりに戻る。この判断も、場当たり的に作らず全体を見て優先順位をつける姿勢から来ています。
結果:ベースラインの可視化
全職員アンケートの結果、AIを「ほとんど使っていない」「まったく使っていない」と答えた職員は49.5%でした(回答269件、アンケート実施時点の実測値)。およそ半数の職員が、生成AIをまだ業務で使っていない状態です。
この数値は成果ではなく、これからの取り組みの基準点です。数値が分かったことで、「使っている職員をさらに伸ばす支援」と「まだ使っていない職員が最初の一歩を踏み出す支援」を分けて考えられるようになりました。導入後の効果は、年内に同じ方法で数値化する予定です。
研修後の定着を測る考え方は、研修後アンケートや部署ごとの活用状況を追ったA社(関西・不動産業)の事例も参考になります。
担当コンサルタントのコメント
社会福祉法人Fの支援で意識しているのは、「使っていない約半数」を責める数字として扱わないことです。福祉の現場は人手に余裕がなく、新しい道具を試す時間を取りにくいのが実情です。使っていないのは意欲の問題ではなく、きっかけと安心できるルールがまだないだけ、というケースが多いと感じています。
だからこそ、ツールの使い分けを具体的に示すことや、個人情報の扱いなどのルールを整えることといった「迷わず始められる状態」をつくることが先になります。シフト自動化で運営ルールの標準化を優先したのも、同じ考え方です。
法人の規模が大きいほど、最初に測る価値は高くなります。数百名規模の組織で一度ベースラインを取っておけば、その後の研修やツール導入の効果を、経営層にも現場にも同じ物差しで説明できます。
今後の取り組み
今後も月次DX推進室定例への伴走を続けながら、アンケートで見えた層ごとに支援を進めていきます。導入後の効果は年内に数値化する予定で、結果がまとまった時点で本記事に追記します。
- アンケート結果をもとに、職員の利用状況に合わせた支援の優先順位を定例で決める
- シフト作成は、拠点ごとの運営ルールの標準化を先に進める
- 導入後に同じ方法で浸透度を測り、ベースラインと比較する
生成AI導入の全体の進め方は中小企業の生成AI導入 完全ガイド、研修を定着につなげる方法はAI研修を「やって終わり」にしない方法で解説しています。継続的な伴走の形は生成AI顧問のページで紹介しています。
同じ課題を持つ法人の方へ
社会福祉法人や複数拠点の法人で、生成AIの導入を検討している方からよくいただく質問をまとめました。
CES UP株式会社 取締役CAIO。生成AIアドバイザー、生成AIコミュニティ「SHIFT AI」認定講師。中小企業・士業・福祉・教育など幅広い業種で、ヒアリング起点のAI研修と、研修後の定着・ツール化までの伴走支援を担当。「AIを使える」から「AIで自分たちの仕組みを作れる」状態をゴールに、現場の業務に合わせた設計を行っている。
CES UP株式会社は、大阪を拠点に中小企業の生成AI導入・AI研修・業務改善ツール開発を支援する会社です。
公開日:2026年9月17日/最終更新日:2026年9月17日