#AI研修・助成金
2026.09.09
AI研修の選び方と助成金活用ガイド|人材開発支援助成金の要点
「AI研修を検討しているが、どの会社のどんな研修を選べばよいか分からない」「人材開発支援助成金が使えると聞いたが、条件がよく分からない」。社内でAI推進を任された方から、よくいただくご相談です。
この記事では、AI研修を選ぶときの7つの基準と、人材開発支援助成金を活用する際の要点を解説します。助成金の情報は、厚生労働省の公式ページと令和8年8月3日版のパンフレットをもとに2026年9月時点で整理しています。AI研修の設計と講師を担当している灰藤が、現場での経験も交えてお伝えします。
- AI研修は「自社の業務に合わせてくれるか」「研修後のフォローがあるか」を最優先で比べると、定着まで見据えた選択ができる
- 人材開発支援助成金は、要件を満たせばAI研修にも活用できる可能性がある。候補は事業展開等リスキリング支援コース、人材育成支援コースなど
- 事業展開等リスキリング支援コースの助成率は中小企業で経費75%・賃金1時間1,000円(2026年9月時点の公式パンフレットより)
- 令和8年8月3日以降の計画では、汎用的なプロンプト研修など職務に直結しない内容は対象外。業務に直結した研修設計が欠かせない
- 計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前まで。「実質無料」をうたう勧誘には注意する
AI研修とは? 種類と特徴
AI研修とは、社員が生成AIを業務で活用できるよう、知識・操作・業務への当てはめ方を学ぶ研修のことです。実施形式によって、大きく3つの種類に分けられます。
| 種類 | 特徴 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 録画型のeラーニング | 好きな時間に受講できる。費用を抑えやすいが、自社業務への当てはめは受講者任せになりやすい | まず全社員に基礎知識を広く届けたい会社 |
| 公開講座(他社と合同) | 体系的に学べ、他社の事例にも触れられる。内容は汎用的になりやすい | 担当者1〜2名がまず学びたい会社 |
| 社内向けオーダーメイド研修 | 自社の業務や課題に合わせて内容を設計する。準備に時間はかかるが、研修後に使われやすい | 部署単位で業務にAIを組み込みたい会社 |
どれが優れているというより、目的によって選ぶべき形式が変わります。ただし、研修後に業務でAIを使い続けてもらうことが目的なら、自社の業務を題材にできる形式ほど定着しやすいのが実感です。
なぜ今、AI研修の「選び方」が重要なのか
AI研修の選び方が重要なのは、研修を受けただけでは業務が変わらず、研修費用が「学んで終わり」になりやすいからです。生成AIのツールは誰でも使い始められる一方で、自社の業務にどう組み込むかは会社ごとに答えが違います。
さらに、人材開発支援助成金の活用を考える場合、研修の内容そのものが助成の可否に関わります。2026年8月(令和8年8月3日)の改正で、事業展開等リスキリング支援コースでは、職務に直結しない汎用的な内容の訓練が対象外であることが明確になりました。「どんな研修を選ぶか」と「助成金を使えるか」は、切り離して考えられなくなっています。
AI研修が定着しない理由と対策は、AI研修の効果を定着させる方法|「やって終わり」にしない5つの設計で詳しく解説しています。
AI研修の選び方:7つの基準
AI研修を選ぶときは、次の7つの基準で比較することをおすすめします。上から順に、研修後の定着に与える影響が大きい項目です。
| 基準 | 確認すること | 理由 |
|---|---|---|
| 1. 自社業務へのカスタマイズ | 事前ヒアリングがあるか。自社の書類・データ・業務を題材にできるか | 自分の仕事での使い方が見えないと、研修後に使われない |
| 2. 研修中の実装 | 研修の中で、業務で使える仕組みを実際に作るか | 職場に戻ってから一人で作り切るのは難しい |
| 3. 研修後のフォロー | 月次のフォローアップや相談窓口があるか | 業務で使い始めて最初にぶつかる壁で止まらないため |
| 4. 実施形式 | リアルタイム講義か録画か。質疑応答ができるか | その場で質問できるかどうかで理解度が変わる。助成金の扱いにも関わる |
| 5. 情報管理・社内ルール | 入力してよい情報の範囲や、AI出力の確認方法を扱うか | 情報漏洩やハルシネーション(もっともらしい誤り)への不安を減らす |
| 6. 講師の実務経験 | 講師自身や研修会社が、AIを自社業務で使っているか | 現場のつまずきを知っている講師ほど具体的な助言ができる |
| 7. 助成金への対応 | 計画届のスケジュールや必要書類に沿った研修設計ができるか | 要件に合わない設計だと助成の対象にならない |
基準1〜3が「定着」を左右する
7つのうち、特に重視していただきたいのが1〜3です。関西の不動産業で全国規模のFC本部を運営するJ社では、全6回の実践型研修を、FC加盟店対応・物件データ・広報記事作成という自社固有の業務に当てはめて設計しました。研修後、受講者がExcelからスプレッドシートへの変換で起きたトラブルをAIとの対話で自己解決するなど、自社業務を題材にしたからこそ生まれた活用エピソードが多く見られました(数値の効果測定は未実施です)。
基準4:リアルタイムか録画かで、助成金の扱いも変わる
厚生労働省のパンフレットでは、講師と受講者がリアルタイムで質疑応答できる遠隔講習を「同時双方向型の通信訓練」、学習管理システムで進捗を管理する遠隔講習を「eラーニング」として区別しています。事業展開等リスキリング支援コースでは、eラーニングや通信制の訓練は経費助成の上限額が中小企業で1人15万円とされ、賃金助成も対象外です(2026年9月時点)。
CES UPのAI研修は、録画のeラーニングではなく、Zoomによるリアルタイム講義で実施しています。受講者がその場で自社の業務について質問できる点を重視しているためです。
自社の業務に合わせたAI研修の内容や、助成金を見据えたスケジュールについて相談したい方へ。
人材開発支援助成金とは? AI研修で使える主なコース
人材開発支援助成金とは、事業主が雇用する労働者に職務に関連した訓練を受けさせた場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を国が助成する制度です。厚生労働省の公式ページでは、2026年9月時点で次の7コースが案内されています。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」(2026年9月時点で確認)
このうち、社内向けのAI研修で検討されることが多いのは、事業展開等リスキリング支援コースと人材育成支援コースです。人への投資促進コースにも「高度デジタル人材訓練」などのメニューがありますが、対象となる講座の条件(ITスキル標準などのレベルに区分された講座等)が定められているため、個別の確認が必要です。
主なコースの助成率・助成額(2026年9月時点)
各コースの助成率は、厚生労働省が公表している令和8年8月3日版のパンフレットに基づいて整理すると、次のとおりです。( )内は中小企業以外(大企業)の値です。
| コース・メニュー | 経費助成率 | 賃金助成額(1人1時間) | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | 75%(60%) | 1,000円(500円) | 事業展開やDX化などに伴い、新たに必要となる専門的な知識・技能の訓練が対象。令和8年度末までの時限措置 |
| 人材育成支援コース(人材育成訓練・正規雇用労働者等) | 45%(30%) 賃金要件等を満たす場合 60%(45%) |
800円(400円) 賃金要件等を満たす場合 1,000円(500円) |
職務に関連した知識・技能を習得させる10時間以上のOFF-JT(通常業務から離れて行う訓練)が対象 |
| 人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練) | 75%(60%) | 1,000円(500円) | ITスキル標準などに基づく一定レベルの講座等が対象 |
1人1訓練あたりの経費助成の上限額
経費助成には、実訓練時間数に応じた上限額があります。事業展開等リスキリング支援コースの場合は次のとおりです(2026年9月時点)。
| 実訓練時間数 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 40万円 | 25万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
| eラーニング・通信制(時間数にかかわらず) | 15万円 | 10万円 |
令和8年8月3日の改正で「対象外」になった研修の例
AI研修を検討する方に特に知っておいていただきたいのが、事業展開等リスキリング支援コースの令和8年8月3日の改正です。この日以降に提出する計画では、DX化・GX化に関する訓練であっても、次の目的の訓練は助成対象外になりました。
- 職業または職務に間接的に必要となる知識・技能を習得させる内容のもの
- 職業または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの
厚生労働省の資料では、生成AIに関する具体例も示されています。
| 判断 | 厚生労働省資料に示された例 | 理由(資料の趣旨) |
|---|---|---|
| 助成対象 | 生成AIを活用して商品提案書の構成案作成、文章生成、修正方法を学ぶ営業担当者向けの訓練 | 営業担当者の具体的な業務に直結し、そのまま活用できる内容のため |
| 助成対象外 | 生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練 | 特定の業務への具体的な適用を伴わない汎用的な内容のため |
また同じ改正で、同コースの受講回数の上限は1人1年度3回のまま、そのうちeラーニングによる訓練は1回までとされました。このほか、パンフレットでは、単に文章入力など初歩的なデジタル機器の操作だけを学ぶ内容や、既存のアプリを購入してその操作方法を学ぶだけの内容、コンサルタントによる指導は対象にならないと明記されています。
助成金を活用する手順と注意点
人材開発支援助成金は、研修を実施した後に申請するのではなく、研修を始める前の手続きが欠かせません。一般的な流れは次のとおりです。
- 研修内容の設計:対象となる社員と、その職務に直結する研修内容・時間数(10時間以上)を決める
- 社内体制の準備:職業能力開発推進者を選任し、事業内職業能力開発計画を策定して社員に周知する
- 計画届の提出:訓練開始日の6か月前から1か月前までに、職業訓練実施計画届を管轄の労働局に提出する
- 研修の実施と経費の支払い:研修を実施し、訓練経費を事業主が全額負担する。訓練期間中も賃金を適正に支払う
- 支給申請:訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に支給申請を行う
出典:事業展開等リスキリング支援コースのご案内(令和8年8月3日版)。コースや訓練の種類によって必要書類や要件が異なります。中小企業が事業展開等リスキリング支援コースで「企業内の人事及び人材育成に関する計画」に基づく訓練を行う場合は、認定経営革新等支援機関による事前確認なども必要です。
計算例:どのくらい助成されるのか
イメージをつかむために、仮の条件で計算してみます。以下は説明用の仮の金額で、CES UPの研修料金ではありません。また、実際の支給額は審査で決まります。
| 条件(仮定) | 内容 |
|---|---|
| 企業規模・コース | 中小企業/事業展開等リスキリング支援コース |
| 受講者・時間 | 社員10名が、所定労働時間内に12時間のリアルタイム研修を受講 |
| 受講料 | 1人あたり15万円(事業主が全額負担) |
| 経費助成 | 15万円×75%=11万2,500円(上限30万円の範囲内)×10名=112万5,000円 |
| 賃金助成 | 12時間×1,000円=1万2,000円×10名=12万円 |
| 合計 | 124万5,000円 |
「実質無料」をうたう勧誘に注意
厚生労働省は、訓練経費を事業主が全額負担することが必須要件であり、「訓練は実質無料」「後からキャッシュバックがある」「広告協力で費用負担なし」といった提案は不正受給のリスクがあると注意喚起しています。不正受給と判断されると、事業主名等の公表、受給額の返還に加えて2割相当額と延滞金の支払い、5年間の雇用関係助成金の不支給などの対象になります。
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金 NO不正受給」リーフレット。判断に迷う場合は、各都道府県労働局の助成金申請窓口に相談してください。
よくある失敗と対策
AI研修と助成金でよくある失敗は、「助成金ありき」で研修を選んでしまうことと、スケジュールの見落としです。
| よくある失敗 | 対策 |
|---|---|
| 助成率の高さだけで研修を選び、内容が業務に合わない | まず自社の業務課題から研修内容を決め、そのうえで使えるコースを確認する |
| 汎用的なプロンプト研修で計画し、対象外になる | 受講者の職務に直結した題材・カリキュラムで設計する |
| 研修日が近づいてから助成金を思い出し、計画届が間に合わない | 研修開始の2〜3か月前から準備を始める |
CES UPの支援事例
CES UPがAI研修を支援した事例のうち、研修の設計で成果や変化が見られた例を紹介します。社名はすべて仮名です。なお、ここで紹介する事例は研修設計の事例であり、助成金の受給事例ではありません。
| 会社(仮名) | 業種・地域 | 研修設計のポイント | 結果 |
|---|---|---|---|
| A社 | 不動産業/関西 | 全6回のAI研修+Googleフォームで議題を事前回収する月次フォローアップ | 研修後アンケート49件中45件(約92%)が「満足」「非常に満足」。2026年2月時点で全13部署中8部署が積極的に活用 |
| D社 | 補助金・助成金活用支援業 | 「手作業をAIでなぞるだけ」の設計を見直し、業務分解からAI解決策の設計まで一気通貫で学ぶ内容に作り直した | 受講者が自発的にリード獲得の自動化や商談振り返りの自動要約を構築し、研修後も自走が継続 |
| J社 | 不動産業/関西・全国規模のFC本部 | 標準研修をFC加盟店対応・物件データ・広報記事作成に当てはめた全6回の実践型研修 | 受講者がAIとの対話でトラブルを自己解決するなど、活用エピソード多数 |
A社の詳しい取り組みは【事例】A社(不動産業)|AI研修+月次フォローで13部署中8部署が活用で紹介しています。内製できる体制がある会社に、設計・精度面の相談相手として伴走した例は学習塾E社の事例をご覧ください。
よくある質問
AI研修の選び方と人材開発支援助成金について、よくいただく質問にお答えします。
まとめ:研修は「業務に直結」で選び、助成金は早めに確認する
AI研修は、自社業務へのカスタマイズ、研修中の実装、研修後のフォローという3点を中心に選ぶと、研修後に使われる研修になります。人材開発支援助成金は、要件を満たせばAI研修にも活用できる可能性がありますが、令和8年8月3日の改正により、職務に直結しない汎用的な研修は対象外であることが明確になりました。
研修内容と助成金の要件は切り離せません。研修開始の2〜3か月前には、研修の内容と助成金の手続きを並行して検討することをおすすめします。生成AI導入の全体像は中小企業の生成AI導入 完全ガイドもあわせてご覧ください。
CES UP株式会社 取締役CAIO。生成AIアドバイザー、生成AIコミュニティ「SHIFT AI」認定講師。中小企業や団体向けに、業務のヒアリングを起点にしたAI研修の設計・講師、研修後の月次フォローアップ、GPTs・Dify・Claude等を使った業務改善ツールの開発支援を担当している。
CES UP株式会社は、大阪を拠点に中小企業の生成AI導入・AI研修・業務改善ツール開発を支援する会社です。プロフィール詳細/AIソリューション事業/AI研修/お問い合わせ