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2026.09.22

【事例】P社(情報発信業)|PCを使わない現場の「スマホ完結」AI研修

パソコンを使わない現場向けに、PC前提の業務効率化手段をスマートフォンで完結する手段へ置き換えたAI研修のイメージ図

※お客様のご意向により社名は仮名で掲載しています。

執筆灰藤 健吾(CES UP株式会社 取締役CAIO/生成AIアドバイザー/生成AIコミュニティ「SHIFT AI」認定講師)
公開日:2026年9月22日/最終更新日:2026年9月22日

「AI研修を受けたが、パソコンを前提にした内容で、自分たちの働き方には使えなかった」。業務のほとんどをスマートフォンで行う現場では、こうした悩みがよく聞かれます。業務効率化の定番であるGASやVBA、Chrome拡張は、どれもパソコンがあって初めて使える手段だからです。

本記事では、情報発信業のP社で、CES UPが実施した「スマホ完結」のAI研修の事例を紹介します。PC専用の機能をすべてスマホで完結する手段に置き換えた設計の考え方と、公式LINEの問い合わせ返信をAIが下書きする支援について、成果を盛らずにお伝えします。

この事例の要点
  • 業種:情報発信業
  • 課題:パソコンを使わない働き方のため、PC前提のAI活用・業務効率化の手段が使えなかった
  • CES UPの支援:GAS・VBA・Chrome拡張などPC専用の内容を、すべてスマホで完結する代替手段に置き換えた研修設計/公式LINEの問い合わせ返信のAI下書き支援
  • 現在の状況:定量的な成果は未確認のため、取り組み内容のみ紹介

ご支援前の課題

P社の課題は、パソコンを使わずに仕事をしているため、一般的なAI活用・業務効率化の方法がそのままでは使えなかったことです。

生成AIを使った業務効率化の解説や研修では、スプレッドシートを自動処理するGAS(Google Apps Script)、Excelの処理を自動化するVBA、ブラウザに機能を追加するChrome拡張がよく登場します。いずれも便利な手段ですが、パソコンの画面とキーボードで操作することが前提です。

パソコンを使わない現場にこれらを持ち込むと、「研修の内容は理解できたが、自分の端末では再現できない」という状態になります。研修の満足度以前に、学んだことが翌日から使えないことが問題でした。

あわせて、公式LINEに届く問い合わせへの返信も、AIで支援できる業務として取り上げました。

P社の取り組みの全体像課題:PC前提の手段が使えなかった、切り口:研修を端末と働き方に合わせる、支援内容:スマホ完結の研修+LINE返信のAI下書き、現在の状況:効果の数値は未確認P社の取り組みの全体像課題PC前提の手段が使えなかった切り口研修を端末と働き方に合わせる支援内容スマホ完結の研修+LINE返信のAI下書き現在の状況効果の数値は未確認
図1 P社(情報発信業)の取り組みの全体像:課題・切り口・支援内容・現在の状況

CES UPの切り口:端末に合わせて研修を組み直す

CES UPが選んだ方針は、「人をツールに合わせる」のではなく「研修をその会社の端末と働き方に合わせる」ことです。これはCES UPの支援メソッドの一つ「現場の端末・制約に合わせる」にあたります。

パソコン導入を前提に「まずPCを覚えましょう」と進める方法もあります。しかし、それでは新しい道具を覚える負担が増え、AI活用そのものが後回しになりがちです。いま手元にあり、毎日使い慣れているスマホで完結させるほうが、研修の翌日から使える状態をつくりやすくなります。

CES UPの考え方
研修のゴールは「知識を得ること」ではなく「翌日から自分の端末で使えること」です。そのため、事前ヒアリングで使っている端末・アプリ・業務の流れを確認し、研修で紹介する手順はすべて受講者の環境で再現できるものに限定します。

実施したこと①:PC専用機能をスマホ完結の手段に置き換える

P社の研修では、PC専用の機能(GAS・VBA・Chrome拡張)を扱う内容を、すべてスマホで完結する代替手段に置き換えました。置き換えは、次の手順で設計しています。

STEP 1PC前提の内容を洗い出す
通常の研修カリキュラムのうち、パソコンがないと再現できない手順(GASでの自動化、VBAでの表処理、Chrome拡張での要約など)を一つずつ洗い出します。
STEP 2「その手段で何を実現したいか」に分解する
GASやVBAは手段にすぎません。「毎回の定型文を作る」「表を集計する」「長い文章を要約する」など、実現したい目的に言い換えます。
STEP 3スマホで完結する手段に置き換える
目的ごとに、スマホのAIアプリだけで実現できる方法を選び直します。仕組みを作り込むより、日々の操作で再現しやすいことを優先します。
STEP 4研修で実際にスマホで操作する
置き換えた手順は、受講者が自分のスマホで操作して確認します。説明を聞くだけで終わらせないためです。

置き換えの考え方(一般的な例)

下の表は、PC前提の手段をスマホ完結に置き換える際によく検討する考え方の例です。実際にどの手段を選ぶかは、会社ごとの業務と利用アプリによって変わります。

PC前提の手段をスマホ完結に置き換える考え方GASは指示文テンプレートと音声入力、VBAはカメラ撮影とAIアプリでの読み取り、Chrome拡張は文章の貼り付けによる要約・校正に置き換える考え方の例PC前提の手段をスマホ完結に置き換えるPC前提の手段スマホ完結での考え方(例)GASスプレッドシートの自動処理指示文のテンプレートを用意し、材料を入力・音声で伝えて下書きVBAExcelの表処理表や書類をカメラで撮影し、AIアプリで読み取り・整理Chrome拡張ブラウザ上の要約・翻訳対象の文章をAIアプリに貼り付け、要約・校正・言い換えを依頼
図2 PC前提の手段をスマホ完結に置き換える考え方の例(P社で採用した構成そのものではありません)
PC前提の手段 実現したいこと(例) スマホ完結での考え方(例)
GAS(スプレッドシートの自動処理) 定型的な文章や連絡文を毎回作る AIアプリに、よく使う指示文(テンプレート)を用意しておき、材料を入力・音声で伝えて下書きを作らせる
VBA(Excelの表処理) 手元の数字や一覧を整理・集計する 表や書類をカメラで撮影し、AIアプリに読み取り・整理を依頼する。結果は必ず人が確認する
Chrome拡張(ブラウザ上の要約・翻訳) 長い文章を要約する・言い換える 対象の文章をAIアプリに貼り付け、要約・校正・言い換えを依頼する

スマホ完結に置き換える際の考え方の例(CES UP作成。P社で採用した構成そのものではありません)

スマホで使える主な生成AIアプリの機能は、公式情報で確認できます。2026年9月時点で、Googleの公式ヘルプでは、Geminiモバイルアプリで「入力するか、話しかけるか、写真を使って」やり取りでき、カメラで撮った写真について質問したり、文章の作成・校正・翻訳ができると案内されています。OpenAIのヘルプでは、ChatGPTの音声機能(Voice)がiOS・Androidのアプリで使えると案内されています。機能や無料で使える範囲は変わることがあるため、導入時には最新の公式情報を確認してください。

「研修の場で、実際に動く形まで作る」という考え方は、C社(中国地方・景品交換・会員制サービス)の事例でも紹介しています。

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実施したこと②:公式LINEの問い合わせ返信をAIが下書き

もう一つの取り組みが、公式LINEに届く問い合わせへの返信を、AIが下書きする支援です。返信文をゼロから考える負担を減らしつつ、最終的な送信は人が行う運用を前提にしました。

公式LINE問い合わせ返信のAI下書きの流れ公式LINEに届いた問い合わせに対し、AIが返信の下書きを作り、人が内容と言い回しを確認・修正して、人の判断で送信する流れ公式LINEの問い合わせ返信は「下書きはAI、送信は人」問い合わせ公式LINEに届くAIAIが下書き返信の下書きを作る人が確認・修正内容・言い回しを確認送信人が判断して送るAIの役割送信の判断は人
図3 公式LINEの問い合わせ返信は、AIが下書きし、送信の判断は人が行う
  • AIの役割:問い合わせ内容を読み、返信の下書きを作る
  • 人の役割:下書きの内容・言い回しを確認し、必要に応じて修正してから送る
  • ねらい:返信の「書き出し」にかかる負担を減らし、確認と判断に時間を使えるようにする

問い合わせ対応は、誤った案内や不適切な表現がそのままお客様に届くリスクがあります。そのため、はじめから自動返信にするのではなく、「下書きはAI、送信の判断は人」という線引きから始めることをおすすめしています。

なお、LINE公式アカウント側にも、2026年9月時点で「AIチャットボット(β)」を応答方法として設定できることが、LINEヤフー for Businessの応答設定マニュアルに記載されています。自動応答まで進めるかどうかは、下書き運用で問い合わせの傾向や誤りのパターンを把握してから判断するのが安全です。

現在の状況

記事公開時点で、P社の取り組みによる時間短縮などの効果の数値は確認できていません。本記事は取り組み紹介として、研修設計の考え方と実施内容のみを掲載しています。

効果を数字で確認できた場合は、本記事をリライトして結果を追記します。

担当コンサルタントのコメント

担当コンサルタント 灰藤 健吾

AI研修の相談を受けると、「パソコンを使う人向けの内容しかない」という声を聞くことがあります。GASやVBAは強力な手段ですが、パソコンを使わない現場では、学んでも使う場面がありません。

P社の研修では、「その手段で何をしたいのか」に立ち返って、すべての手順をスマホで完結する形に置き換えました。大事なのは、ツールの機能を網羅することではなく、受講者が翌日から自分の端末で同じことを再現できることです。

同じように、パソコン中心ではない働き方の会社には、まず「普段どの端末で、どのアプリを使って仕事をしているか」を確認することをおすすめします。そこから逆算すると、無理のないAI活用の形が見えてきます。

スマホ完結でAIを使うときの注意点

スマホ完結のAI活用は手軽な反面、パソコン以上に「誰が、どのアカウントで、何を入力しているか」が見えにくくなります。研修とあわせて、次の3点を社内で決めておくことをおすすめします。

スマホでAIを使う前に決める3つのこと入力してよい情報、使うアカウント、出力の確認の3点を、スマホでAIを使い始める前に社内で決めておくことを示す図スマホでAIを使う前に決める3つのこと1 入力してよい情報個人情報は利用目的と学習利用の有無を確認2 使うアカウント業務用のアカウントとプランを会社で決める3 出力の確認送信前に必ず人が確認する
図4 スマホ完結でAIを使うときに、社内で決めておきたい3つのこと
  1. 入力してよい情報を決める:お客様の氏名や連絡先などの個人情報を入力する場合は、利用目的の範囲内か、入力データがAIの学習に使われない設定・契約かを確認します。個人情報保護委員会も2023年6月に生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しています。
  2. 使うアカウントを決める:個人のアカウントで業務データを扱うと、退職時などに情報の管理が難しくなります。業務で使うアカウントとプランを会社として決めておきます。
  3. AIの出力は必ず人が確認する:写真からの読み取りや要約には誤りが含まれることがあります。特にお客様に送る文章は、送信前の確認を徹底します。

研修の選び方や、研修後に定着させるための考え方は、AI研修の選び方と人材開発支援助成金の活用ガイドとAI研修を「やって終わり」にしない方法で解説しています。

同じ課題を持つ企業の方へ(よくある質問)

Q. スマホだけでも生成AIの研修は成り立ちますか?
A. 成り立ちます。ただし、PC向けの研修内容をそのまま使うのではなく、GAS・VBA・Chrome拡張のようなPC専用の手段を、スマホで完結する手段に置き換えて設計し直す必要があります。P社の研修はこの置き換えを前提に組み立てました。
Q. スマホで使える生成AIアプリには何がありますか?
A. 代表的なものに、ChatGPTやGeminiのモバイルアプリがあります。2026年9月時点の公式ヘルプでは、Geminiアプリはカメラで撮った写真について質問でき、ChatGPTの音声機能はiOS・Androidで利用できると案内されています。機能や利用条件は変わるため、導入前に公式情報を確認してください。
Q. 公式LINEの問い合わせ対応をAIに完全に任せてもよいですか?
A. P社では、AIに返信の下書きを作らせ、内容を人が確認してから送る運用を前提にしました。お客様とのやり取りは誤りの影響が大きいため、まずは下書き支援から始め、どこまで自動化するかは運用しながら判断するのが安全です。
Q. P社の研修でどのくらい業務時間が減りましたか?
A. 記事公開時点で、効果の数値は確認できていません。本記事は取り組み紹介として、研修設計の考え方と実施内容のみを掲載しています。

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この記事を書いた人
CES UP株式会社 取締役CAIO/生成AIアドバイザー/生成AIコミュニティ「SHIFT AI」認定講師

中小企業を中心に、生成AIの導入支援・AI研修・業務改善ツールの設計を担当。研修は事前ヒアリングで受講企業の業務に合わせてカスタマイズし、Zoomによるリアルタイム講義と月次フォローアップで現場への定着まで伴走している。不動産・士業・教育・保育福祉・婚礼・旅館飲食・医療など、幅広い業種のAI活用を支援。 プロフィール詳細

CES UP株式会社(セスアップ)は、大阪を拠点に中小企業の生成AI導入・AI研修・業務改善ツール開発を支援する会社です。CS(顧客満足)とES(従業員満足)を共に高める「気持ちよく機能する仕組みづくり」を理念に、生成AI顧問・AI研修・ツール開発を提供しています。AIソリューション事業/お問い合わせ



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