#導入事例・セミナー報告

2026.10.14

【亀岡市】医療・介護職向け生成AIセミナー報告|書類時間を減らす使い方

第38回かめおか医療連携研究会 生成AIセミナー「楽しく学ぼう!やさしいAI活用」講師 灰藤健吾 表紙スライド
執筆灰藤 健吾(CES UP株式会社 取締役CAIO/生成AIアドバイザー/生成AIコミュニティ「SHIFT AI」認定講師)
公開日:2026年10月14日/最終更新日:2026年10月14日

「記録や書類に追われて、利用者さんと話す時間が取れない」。医療・介護の現場で、いちばん多く伺う悩みです。2026年10月10日、京都府亀岡市のガレリアかめおかで開かれた第38回かめおか医療連携研究会に講師として登壇し、医療・介護・福祉の職員の方々に向けて、はじめての生成AIセミナーを行いました。

この記事では、講座で伝えた考え方と、スライドの一部、当日の実演の内容、そして参加者アンケート(回答35名)の結果を、講師の灰藤健吾が報告します。介護・看護の現場でAIを使い始めたい方、職員向けの勉強会を検討している方の参考になれば幸いです。

この記事の要点
  • 亀岡市の医療・介護・福祉の職員向けに、2時間30分の生成AIセミナー(講義と実習)を行った
  • テーマは「人との時間」。記録・報告文・シフト・議事録の時間を減らし、目の前の方と向き合う時間を増やす
  • 伝えた型は、頼み方の3要素「目的・成果物・条件」と、合言葉「優秀だけれど、うのみは禁物な相談相手」
  • アンケート回答35名のうち28名が満足度5点満点中5。期待に対する満足度は35名全員が「満足」以上
  • 「今日から取り組むこと」で最も多かったのは議事録・会議録(7名)。次いで記録・報告書、ケアプラン

開催概要

今回のセミナーは、亀岡市地域医療・介護・福祉連携推進会議(人材育成部会)が主催する「かめおか医療連携研究会」の第38回として開催されました。参加者は亀岡市内の病院・訪問看護・訪問介護・居宅介護支援・地域包括支援センター・市役所などの職員の方々で、生成AIをほとんど使ったことがない方が中心でした。

名称 第38回 かめおか医療連携研究会「AIで生まれる、人と向き合う時間 〜はじめての生成AIセミナー〜」
日時 2026年10月10日(土)13:30〜16:00
会場 ガレリアかめおか 2階大広間(京都府亀岡市)
主催 亀岡市地域医療・介護・福祉連携推進会議(人材育成部会)
対象 亀岡市内の医療・介護・福祉の職員(看護師、介護支援専門員、保健師、薬剤師、事務職など)
形式 講義と実習を一体で進行(4名程度のテーブル席。パソコンまたはスマートフォンでChatGPTを操作)
講師 灰藤 健吾(CES UP株式会社 取締役CAIO)

テーマは「人との時間」:書類の時間を減らし、向き合う時間を増やす

このセミナーのテーマは、AIで書類づくりの時間を減らし、その分を患者さん・利用者さんと向き合う時間に戻すことです。研究会のテーマ「人との時間」に合わせ、AIは目的ではなく、そのための道具だという位置づけから話を始めました。

「今日のテーマは『人との時間』です。書類づくりの時間を減らし、目の前の方と向き合う時間を増やします。AIは、そのための道具。」と書かれたスライド
スライド抜粋:今日のテーマ(全65枚中 3枚目)

内容は、事前に主催者を通じていただいた亀岡市ヘルパー部会のアンケート(5事業所)をもとに組み立てました。効率化したい業務として多かったのは「報告文の作成」と「シフト作成」(各4事業所)、「会議資料・議事録」(3事業所)。不安としては「操作方法」と「個人情報」(各4事業所)が挙がっていました。そこで当日は、この3つの業務を実演の題材にし、個人情報の扱いに時間を多めに割いています。

区分 事前アンケートで多かった回答(5事業所・複数回答)
効率化したい業務 報告文の作成(4)/シフト作成(4)/会議資料や議事録(3)
不安に感じること 操作方法(4)/個人情報(4)/職員が使いこなせるか(3)
必要な支援 体験会(5)/基本操作の研修(4)/相談できる環境(3)

講座で伝えたこと:AIは「正解を出す係」ではなく「下書き係」

生成AIとは、大量の文章を学び、次に来る言葉を予想しながら文章を組み立てる道具です。下書き・要約・整理・アイデア出しは得意な一方で、最新の情報や正確な数値、それぞれの職場の事情は、教えない限り知りません。だから講座では一貫して、AIを「正解を出す係」ではなく「下書きを作る係」として使うよう伝えました。

AIは「業務」ではなく「タスク」に当てる

AIを使うコツは、業務をまるごと任せるのではなく、業務を小さな作業(タスク)に分けて、合うところにだけ使うことです。講座ではカレーライス作りにたとえました。材料を切るのはフードプロセッサー、煮込むのは圧力鍋、ご飯は炊飯器に任せられますが、火加減を見ながら炒める工程は、いまは人の担当です。

カレー作りの工程ごとに、フードプロセッサー・人間・圧力鍋・炊飯器のどれに任せるかを示したスライド
スライド抜粋:どの工程を、何に任せるか(18枚目)

ケアプランに当てはめると、ご本人やご家族からの聞き取りは人の仕事です。一方で、聞き取った情報をもとに目標や支援内容の下書きを作る部分には、AIが使えます。最後に内容を確かめて仕上げるのは、もちろん担当者です。

頼み方の3要素は「目的・成果物・条件」

AIの答えの差は、頼み方の差で生まれます。講座の中心に置いたのが、目的(何のために)・成果物(何をしてほしいか)・条件(誰向け・文字数・雰囲気・形)の3つをそろえて頼む型です。

頼み方の3要素として、目的・成果物・条件とその例を並べたスライド
スライド抜粋:頼み方の3要素(20枚目)

会場では、同じ依頼を2通りの頼み方でChatGPTに送り、出てきた文章を見比べました。

BEFORE:何となく頼む

地域の健康相談会の案内文を考えてください。

AFTER:3要素をそろえて頼む

目的:地域の高齢の方に、健康相談会へ来てもらうために、
成果物:案内文を3案、考えてください。
条件:高齢の方にも読みやすいやさしい言葉で、200字くらい、あたたかい雰囲気でお願いします。

一度で完璧を狙う必要はありません。出てきた文章に「もっと短く」「やさしい言葉で」と続けて頼めば、少しずつ近づいていきます。アンケートでも、この「頼み方」を新しい発見として挙げた方が多くいました。

使うときの3つの注意点:個人情報は「プランの選び方」と「消し方」で守る

生成AIを使うときに押さえる注意点は、それっぽい間違い(ハルシネーション)・情報漏洩・著作権の3つです。医療・介護の現場では、とくに個人情報への不安が大きいため、ここに講座の中でもっとも長い時間を使いました。

注意点 起こりうること 現場での対策
それっぽい間違い 事実を調べているのではなく、それらしく続く言葉をつないでいるため、もっともらしい誤りが出る 数値・日付・人名・制度名は、元の資料で必ず照合する
情報漏洩 学習への利用のほか、実際に起きやすいのは、履歴が残ったアカウントの乗っ取り 学習に使わせない設定にする。氏名・住所・電話番号はできるだけ入れず、入れたら履歴を削除する
著作権 既存の作品に似たものを、それと知って作ると問題になりうる(類似性と依拠性) 作品名やキャラクターを指定しない。社外に出す前に確認する

個人情報について強調したのは、分かれ目は「有料か無料か」ではなく、個人で使うプランか、組織で使う法人向けプランかだという点です。法人向けプランなら、管理者が利用状況を把握でき、職員が退職したときにアカウントを事業所側で止められます。個人のアカウントでは、それができません。

個人で使うプランと組織で使う法人向けプランの違いを比べ、退職した職員のアカウントは事業所側で止められないことを示したスライド
スライド抜粋:プランの分かれ目(28枚目)。各社の公式情報をもとに2026年10月時点で作成

なお、医療・介護の記録をAIにどこまで入力してよいかは、法令や業界のガイドライン、所属法人の規程によって判断が変わります。講座では法的な可否は断定せず、「法人向けプランを使う」「入れたら消す」「所属法人のルールに従い、なければ作る」という一般的な運用をお伝えしました。

最後に、注意点をひとことでまとめた合言葉を共有しました。「優秀だけれど、うのみは禁物な相談相手」です。7〜8割をAIが下書きし、人が確認・修正して仕上げる。この役割分担を守れば、怖がらずにどんどん相談してよい道具です。

今日の合言葉「優秀だけれど、うのみは禁物な相談相手」と、確認する・個人情報を入れない・最終判断は自分たちでする、の3点を示したスライド
スライド抜粋:今日の合言葉(41枚目)

実習と実演:報告文・シフト・議事録をその場で作る

後半は、参加者の皆さんに実際にChatGPTを動かしていただきました。同じチャットの中で依頼を重ねていくと、前の内容を踏まえて続きを作ってくれることを、体験しながら確かめる構成です。

ステップ やったこと ねらい
STEP1 自分の事業所名と所在地を入れ、ホームページ用・求人サイト用の紹介文を作る 出てきた文章は下書き。実際と違うところは自分で直す
STEP2 同じチャットのまま、事業所で開くイベントのお知らせ文を作る 新しいチャットを開かずに続けると、前の内容が生きる
STEP3 お知らせ文を、A4一枚のチラシ画像にしてもらう 文章だけでなく、画像も作れることを体験する

続いて講師が、事前アンケートで要望の多かった業務を、架空のデータを使って実演しました。

実演 入力したもの 頼み方のポイント
報告文 訪問介護のメモ(架空):食事量、水分、ふらつき、ご本人の発言など メモにある事実だけを使い、書いていないことは足さない。分からない点は「確認したい点」として出させる
シフト スタッフ5名、週4日勤務、毎日2〜3名、休み希望 表で出してもらい、条件を満たしているかAI自身にも確認させる。人も必ず確認する
議事録 ケース会議の文字起こし(架空) 発言にない内容は書かない。結論と、残された課題を分けて出させる
手順書 ご家族向けに伝えたい内容 構成案を出させて壁打ちし、最後にWordで出力。名前や写真は担当者が最後に入れる
架空の訪問メモと、そこから作られた報告文の出力イメージを並べたスライド
スライド抜粋:実演1 報告文の出力イメージ(53枚目)。メモは架空のものです
スタッフ5名の1週間の勤務表をAIに作らせた出力イメージのスライド
スライド抜粋:実演2 勤務表の出力イメージ(55枚目)。直したい所は言い直して調整します

どの実演でも共通して伝えたのは、出力は毎回少しずつ変わるので、最後は必ず人が読んで直すということです。そのうえで、ゼロから書く時間が、確認して直す時間に置き換わるだけでも、書類にかかる負担は大きく変わります。シフト作成の自動化については「シフト作成の属人化を段階的に解消した事例」、議事録の検証の仕組みについては「議事録をAIが作り、別のAIが検証する自社事例」で詳しく紹介しています。

参加者アンケートの結果は?

終了後のアンケートには35名の方が回答してくださいました。講座全体の満足度(5点満点)は、35名中28名が最高評価の「5」、4名が「4」でした。セミナーに期待していたことへの満足度は、35名全員が「満足」以上(「とても満足」21名、「満足」14名)です。

設問 結果(回答35名)
講座全体の満足度(5点満点) 5:28名/4:4名/1:3名
期待していたことに対する満足度 とても満足:21名/満足:14名
回答者の役職 管理職・マネージャー:21名/一般職:11名/代表:3名
無料のAI活用診断 「ぜひお願いしたい」:17名

※満足度「1」と回答した3名は、期待に対する満足度ではいずれも「とても満足」または「満足」と回答されており、選択の取り違えの可能性があるため、平均点は掲載していません。

「今日から取り組むこと」でいちばん多かったのは議事録

「本日の講座を受けて、今日から何に取り組みますか」という質問への回答(自由記述)を分類すると、議事録・会議録が7名で最多でした。次いで、記録・報告書が5名、ケアプラン・アセスメントが4名と、書類づくりに使いたいという声が中心です。ほかにも、勉強会のスライド作成、行事計画、スケジュール表、ボイスメモの文章化などが挙がりました。

取り組みたいこと 人数 回答の例
議事録・会議録 7名 サービス担当者会議の要点整理、事業所内カンファレンスの議事録
記録・報告書 5名 看護記録、訪問看護の報告書、メモを報告書に仕上げる
ケアプラン・アセスメント 4名 ケアプランの下書き、アセスメント
その他 — スライド・ポスター作成、行事計画、勤務表、ボイスメモの文章化、壁打ち

※自由記述を講師が分類(1名が複数に該当する場合あり)。

参加者の声

自由記述からいくつかご紹介します(表記は一部整えています)。

「ポスターや議事録、計画書等の作成の時間が大幅に短縮されるのに感動しました。」
地域包括支援センター/看護師
「いま困っていること、手を取られていること等から、何をAIに任せて、何を人がするか仕分けしていきたいです。」
通所介護/管理職
「質問の仕方の工夫で回答が変わるということ(が発見でした)。」
病院/事務職
「パソコン操作が苦手でしたがやってみたい!と思いました。」
居宅介護支援事業所/介護支援専門員
「苦手、わからないのは当たり前。一度話を聞いて、実際に触ってみて。」
病院/事務職(このセミナーをすすめるなら、の回答)

医療・介護の現場でAIを始めるなら、何からがよい?

医療・介護の現場でAIを始めるなら、毎日1つ、個人情報を含まない小さな下書きをAIに頼むことから始めるのがおすすめです。これは、事前にヘルパー部会からいただいた質問への回答として、当日お伝えした内容でもあります。

段階 やること 例
1. 慣れる 個人情報を含まない文章の下書きを、毎日1つ頼む 連絡文、お知らせ文、言い換え、イベントの案内
2. ルールを決める 法人向けプランの導入と、入力してよい情報・してはいけない情報を決める 所属法人の規程を確認し、なければ作る
3. 業務に広げる 議事録・報告文・シフトなど、元のデータがある書類から使う 会議の文字起こしから議事録、メモから報告文

AIが広がっても、人にしかできないことは変わりません。目の前の方に会って話すこと、表情や様子の変化に気づくこと、そして最後に責任をもって判断すること。書類の時間をAIに手伝ってもらうのは、その時間を確保するためです。福祉法人で全職員の利用状況を調べてから研修を組み立てた事例は「AI未活用49.5%を全職員調査で可視化した社会福祉法人の事例」で紹介しています。

よくある質問

Q. パソコンが苦手でも、生成AIは使えますか?
A. 使えます。今回の参加者には「パソコン操作が苦手」という方も多く、スマートフォンのChatGPTアプリでも実習しました。音声で話しかけるだけでも使えるため、まずはスマートフォンで1つの下書きを頼むところから始めるのがおすすめです。
Q. 介護記録や利用者さんの情報を、AIに入力してもよいですか?
A. 一般論として、個人で契約するプランではなく、管理者が利用状況を把握できる法人向けプランを使い、氏名・住所・電話番号などはできるだけ入れない、入れた場合は履歴を削除する、という運用をおすすめしています。医療・介護の記録をどう扱えるかは、所属法人の規程や業界のガイドラインで必ず確認してください。
Q. 最初にAIを使うなら、どの業務がよいですか?
A. 会議の議事録や、メモからの報告文づくりが始めやすい業務です。今回のアンケートでも「今日から取り組むこと」として議事録・会議録を挙げた方が最も多く、35名中7名でした。元の発言やメモがあるため、AIの出力を人が確認しやすいのも理由です。
Q. 自治体や職能団体、事業所向けに同じセミナーを開いてもらえますか?
A. 開催できます。CES UPでは、自治体・医療介護の連携会議・職能団体・企業向けの講演やセミナーを承っています。事前アンケートで現場の困りごとを伺い、実演の題材を合わせて組み立てます。講演・セミナーのページまたはお問い合わせフォームからご相談ください。
Q. セミナーのあと、事業所ごとの相談はできますか?
A. できます。事業所の業務のどこにAIを当てるとよいかを整理する、無料のAI活用診断をご用意しています。今回のアンケートでは、回答者35名のうち17名の方からご希望をいただきました。

まとめ

第38回かめおか医療連携研究会の生成AIセミナーでは、「AIで書類の時間を減らし、人と向き合う時間を増やす」をテーマに、頼み方の3要素、個人情報を含む注意点、報告文・シフト・議事録の実演までを2時間30分で体験していただきました。アンケートでは35名中28名が満足度5と回答し、議事録や記録から使い始めたいという声が多く集まりました。

ご参加いただいた皆さま、主催の亀岡市地域医療・介護・福祉連携推進会議(人材育成部会)の皆さまに、心よりお礼申し上げます。

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参考・出典
  • 第38回かめおか医療連携研究会 案内チラシ(主催:亀岡市地域医療・介護・福祉連携推進会議 人材育成部会)
  • 亀岡市ヘルパー部会 事前アンケート(5事業所、主催者経由で受領)
  • 参加者アンケート:2026年10月10日のセミナー終了後に実施(回答35名、CES UP株式会社集計)
  • スライド28枚目のプラン比較:OpenAI・Google・Microsoftの各公式ページをもとに2026年10月時点で作成
この記事を書いた人
CES UP株式会社 取締役CAIO/生成AIアドバイザー/生成AIコミュニティ「SHIFT AI」認定講師
企業・団体向けのAI研修やセミナーに登壇し、これまでのセミナー受講者は1万人超。介護・福祉分野でのAI研修や顧問業務も多く手がける。著書に『AIで加速する!効率化の教科書』(きずな出版)、監修に『GPTsライフハック』(技術評論社)。
CES UP株式会社は、大阪を拠点に中小企業の生成AI導入・AI研修・業務改善ツール開発を支援する会社です。



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